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2023.08.02
以前暮らしていたサンフランシスコ近郊は1989年に大きな地震を経験しており、危機意識も高く、シビックプライドもある。「防災」という言葉は腑に落ちないこともあり、「個人主義」と言われる現地ではどのような枠組みと取り組みで緊急対応がなされているかについて簡単な調査を対象に行った。
まずCARD(Community Agency for Responding Disasters )というNPOの代表への聞き取りからは、防災という枠組みではなく、Emergency(緊急)に対して、Prepare(備える), Respond(対応する), Recover(回復する)という枠組みで、近隣の宗教施設、学校、ヒスパニックなどの「脆弱層」をされるコミュニティ、そしてそれらに関わるNPOにプログラムを提供していることがわかった。その「緊急」には、災害への備えやタイプだけでなく、銃乱射の際の命の守り方やDV被害者への対応など、緊急時に生き延びるための様々なトピックがあることが発見だった。
地域ボランティアとしては、サンフランシスコ市の消防局の管轄にあるNERT(Neighborhood Emergency Response Team )と、同じく市の緊急時対応局の管轄にあるACS がある。NERTのボランティアであるJWさんに話を伺ったところ、やはり地震の後に災害への意識が芽生え、退職後のネットワークとしてボランティアになり、月1度程のトレーニングを受けつつ、それを地域に還元させる努力をしていることがわかった。ACSはアマチュア無線のボランティアの集まりで災害時に活動することに備えている。このメンバーであるCSさんは月1のオンライン会議に参加しつつ無線サークルとして趣味と両立させていると言う。両者とも白人男性であり、聞くと、アッパーミドルの人が中心であり、NERTについては、あくまで活動の中心は、社会経済的な状況が似ている近所に止まるようだ。
まちを歩くと、あちこちに可愛らしい私設の本のリサイクルポストがあることに気がつく。読まない本を置き、読みたい本を自由に取れる仕組みだ。市内には、オーガニック食品の計り売りの店も少なくない。サンフランシスコ市内にはごみ処理施設が無く、ゴミ収集もコンポスト、リサイクル、埋めたての3種にゴミを分ける取り組みを全米でもいち早くはじめた。ない、と言う事が、まちにつながりのデザインを生み出しているようだ。これがシビックプライドの育みにつながり、緊急時の助け合いの、素地になるのかもしれない。
サンフランシスコも横浜も大きな港湾都市である。文化や言語、制度の違いはあれど、学べることはたくさんあるように思えた。
出張時期:2023年3月
報告者:佐藤峰准教授(YNU防災研:地域ユニット、哲学ユニット所属。豊穣な社会研究センター:つながり方研究所所属。)